目次
ボーカルの周波数を上げる(ブースト)べき時
明瞭さを強調する
- 周波数帯域: 2kHz~4kHz
- 具体的な例: ボーカルが他の楽器に埋もれている場合、2.5kHzを+3dBブーストすることで、ボーカルがミックスの中で前に出て、明瞭に聞こえるようになります。この帯域はボーカルの言葉の明瞭さやディクションを際立たせるのに非常に効果的です。
空気感を追加する
- 周波数帯域: 10kHz以上
- 具体的な例: ボーカルに輝きや空気感を追加したい場合、12kHzを+4dB程度ブーストします。これにより、ボーカルがよりオープンでシャープなサウンドになり、ミックス全体に広がりを与えることができます。
ウォームさを追加する
- 周波数帯域: 100Hz~250Hz
- 具体的な例: ボーカルが薄く感じる場合、150Hzを+2dB程度ブーストすることで、ボーカルに暖かさと厚みを加えることができます。ただし、この帯域をブーストしすぎると、ボーカルがこもって聞こえる可能性があるので、注意が必要です。
ボーカルミックス完全解説!EQ編 | DTM備忘録
EQ(イコライザー)は、ボーカルトラックの音質を調整し、ミックス全体でバランスの取れたサウンドを実現するための重要なプラグインです。ここでは、ボーカルEQの基礎と応…
ボーカルの周波数を下げる(カット)べき時
こもり音を取り除く
- 周波数帯域: 200Hz~400Hz
- 具体的な例: ボーカルがこもって聞こえる場合、300Hzを-3dBカットすることで、ボーカルがよりクリアに響くようになります。この帯域はしばしば「こもり」の原因となるため、カットすることで音がすっきりとします。
シビランス(「サ行」の強調)を抑える
- 周波数帯域: 6kHz~8kHz
- 具体的な例: ボーカルの「サ行」や「シ音」が耳障りな場合、7kHzを狭いQ幅で-4dBカットすることで、シビランスを抑えることができます。これにより、ボーカルがより自然に聞こえるようになり、リスナーにとって心地よいサウンドになります。
ディエッサーを使えばより効率的に作業を行えます!
不要な低音を削除する
- 周波数帯域: 80Hz以下
- 具体的な例: ボーカルに不要な低音が含まれている場合、80Hz以下をローカットフィルターでカットします。これにより、低音の混濁が減少し、ミックス全体がクリアになります。このカットは特にポップスやロックで効果的です。
ボーカルのQ幅(帯域幅)の決め方
狭いQ幅(High Q)
- 目的: 特定の問題をピンポイントで修正したい時に使用します。
- 具体的な例: シビランスが強すぎる場合、7kHzを狭いQ幅で-4dBカットします。狭いQ幅を使うことで、シビランスを効果的に抑え、他の周波数帯域には影響を与えずに調整できます。
広いQ幅(Low Q)
- 目的: ボーカル全体の特性を滑らかに調整したい時に使用します。
- 具体的な例: ボーカル全体に温かみを加えたい場合、200Hz~400Hzの帯域を広いQ幅で少しだけブーストします。これにより、ボーカルがより厚みのあるサウンドになり、ミックス全体で際立たせることができます。
どのように聞こえたら、どのように対処するか
ボーカルが「こもって」聞こえる場合
- 聞こえ方: ボーカルがミックスの中で前に出てこない、曇ったように聞こえる。全体的に濁っていて、明瞭さが欠けている。
- 対策: 300Hz付近を狭いQ幅で-3dBカットする。
- 効果: ボーカルのこもりが軽減され、クリアで抜けの良いサウンドになります。他の楽器に埋もれず、前に出てきます。
ボーカルの「サ行」や「シ音」が耳障りな場合
- 聞こえ方: ボーカルの「サ行」や「シ音」が強調されており、特に高音域が耳に痛い感じがする。シビランスが過剰で、不快感を与える。
- 対策: 7kHz付近を狭いQ幅で-4dBカットする。
- 効果: シビランスが抑えられ、ボーカルがより自然に聞こえるようになります。耳に痛い高音域が和らぎ、心地よいサウンドになります。
ボーカルが薄く、力強さに欠ける場合
- 聞こえ方: ボーカルがミックスの中で存在感が薄く、力強さや暖かみが足りない。全体的に頼りなく感じる。
- 対策: 150Hz付近を広いQ幅で+2dBブーストする。
- 効果: 低音域をブーストすることで、ボーカルに暖かさと厚みが加わります。結果的に、ボーカルが力強く、しっかりとした存在感を持つようになります。
ボーカルが他の楽器に埋もれて聞こえにくい場合
- 聞こえ方: ボーカルがミックスの中で他の楽器に埋もれ、はっきりと聞こえない。言葉がぼやけて聞こえる。
- 対策: 3kHz付近を広いQ幅で+3dBブーストする。
- 効果: ボーカルがミックスの中で前に出て、言葉が明瞭に聞こえるようになります。リスナーにとって、ボーカルが際立って聞こえるようになります。
ボーカルのアタックが弱い、シャープさに欠ける場合
- 聞こえ方: ボーカルのアタックが弱く、サウンド全体がぼやけた印象を受ける。力強さやシャープさが足りない。
- 対策: 7kHz付近を広いQ幅で+3dBブーストする。
- 効果: 高域をブーストすることで、ボーカルのアタックが強調され、シャープでクリアなサウンドになります。
まとめ
ボーカルのEQ操作は、どのように聞こえるかを基にして、適切な調整を行うことで、ミックス全体のクオリティを大きく向上させることができます。各問題に対して具体的な周波数帯域をブーストまたはカットすることで、ボーカルがクリアで際立ち、他の楽器とのバランスが取れたサウンドを実現できます。これらの具体的な対処方法を実際のミックスで試してみてください。