この順番(EQ → コンプレッサー → EQ)は、ボーカルミックスでよく使われる手法です。それぞれの役割を段階的に整理することで、効率的にノイズを除去しつつ、音作りを進められるというメリットがあります。このアプローチを採用する理由とその効果を詳しく解説します。
順番ごとの役割と効果
1 EQ(ノイズ除去・ピークカット)
最初にEQを使用する理由
• コンプレッサーに不要な信号を送らないようにする。
•操作例
• ハイパスフィルター(Low Cut)で低域ノイズ(ポップノイズや空調音)を除去。
• 耳障りなピークや共鳴(例: 特定の周波数が響きすぎる部分)を削る。
メリット
• ノイズや不要な低音を排除することで、コンプレッサーが余計な信号に反応しなくなる。
• コンプレッサーの動作が自然になり、より狙った効果を得やすい。
2 コンプレッサー(ダイナミクス調整)
次にコンプレッサーを使用する理由
• 声の強弱を整え、一定のダイナミクスを持たせる。
操作例
• 強弱が激しいボーカルを均一化。
• 小さい声を持ち上げつつ、大きい声を抑える。
メリット
• 余計な周波数がカットされているため、コンプレッサーが必要な部分だけに反応。
• ボーカルが安定することで、次の音作りがしやすくなる。
3 EQ(音作り)
最後にEQを使用する理由
• コンプレッション後の音を微調整し、楽曲に合ったキャラクターを加える。
操作例
• プレゼンス(1~5kHz)をブーストしてボーカルを前に出す。
• 空気感(10kHz以上)を持ち上げて透明感を加える。
• 必要に応じて中低域(200~500Hz)を削り、こもった感じを解消。
メリット
• コンプレッサーで整えられた信号に対してピンポイントで音作りが可能。
• 必要に応じてキャラクターを付け加えることで、楽曲全体の中でボーカルを際立たせられる。
この順番を採用するメリット
不要な信号を効率的に処理できる
最初のEQでノイズや不要なピークをカットすることで、コンプレッサーの動作がより正確になります。これにより、コンプレッサーが余計な部分に反応してしまうリスクを回避できます。
コンプレッション後の音作りがしやすい
コンプレッサーでダイナミクスが整うと、最後のEQでの音作りが簡単になります。特に、声の粒が揃っているため、高域や中域のブーストがスムーズに行えます。
ボーカルが楽曲に馴染みつつ、際立つ
この順番で処理することで、以下のような効果が得られます
• ノイズやピークが除去され、クリアな音が得られる。
• ダイナミクスが整い、安定感が出る。
• 最後にキャラクター付けを行うことで、ボーカルが楽曲全体で輝く。
具体的な設定例
最初のEQ(ノイズ除去・ピークカット)
• ハイパスフィルター(Low Cut): 80~120Hzをカット(ポップノイズや低域の不要成分を除去)。
• 耳障りなピークのカット: 例: 36kHz付近の「刺さる音」を軽く削る(-23dB)。
コンプレッサー(ダイナミクス調整)
• スレッショルド: -15dB程度(声の強弱に応じて設定)。
• レシオ: 3:1 ~ 4:1(自然に圧縮する)。
• アタック: 10~30ms(声の立ち上がりを維持)。
• リリース: 50~100ms(ナチュラルにリリース)。
最後のEQ(音作り)
• プレゼンスのブースト: 24kHzを軽く持ち上げる(+23dB)。
• 空気感の追加: 10kHz以上をブースト(+1~2dB)。
• 中低域の調整: 200400Hzを削り、こもり感を解消(-13dB)。
まとめ
1つのプラグインで音作りからノイズの除去までするより、プラグインを分けて分担した方がより作業も明確になり、いい結果を生むと思います。一度試してみてください!