ボーカルMIXにおいて、EQ(イコライザー)は音質を整え、ボーカルを楽曲の中で引き立てるための重要なプラグインです。ピークカットは積極的な音作りとは真逆にある作業で、録音されたファイルを整える、下準備的な重要な作業です。特に、ピークカットは耳障りな音を抑え、バランスの取れたボーカルサウンドを作るための基本技術として欠かせません。
この記事では、EQの基本からピークカットの実践的な手順まで、具体的に解説します。初心者でも取り組みやすい方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください!
ピークカットとは?
ピークカットとは、特定の周波数帯域が「突出して目立っている」部分をEQで抑えることを指します。ボーカルには、マイクの特性や部屋の響き、歌い手の声質によって不要なピークが生まれることが多く、そのままでは耳障りに感じたり、楽曲全体のバランスを崩してしまいます。
ピークカットのメリット
耳障りな帯域を抑える
特定の周波数をカットすることで、より滑らかで聴きやすいボーカルになります。
ボーカルの明瞭感を向上
不要なピークを処理することで、他の楽器と調和し、歌詞がはっきりと聞き取れるようになります。
プロフェッショナルな仕上がりに近づける
ピークカットを行うことで、ボーカルがミックス内で馴染み、自然な印象を作り出します。
EQでピークカットが必要な理由
ボーカル録音には、様々な要因で不要なピークが発生します。例えば
• 録音環境:部屋の反響やマイクの特性による影響。
• 声質:歌い手の声が特定の帯域で目立つことがあります(例:鼻にかかる音が強い場合など)。
• ミックスのバランス:他の楽器と重なる帯域がピークとなり、ボーカルが埋もれたり、逆に耳障りになることがあります。
ピークカットを行うことで、こうした不要な成分を削除し、ボーカルがより馴染むサウンドに仕上げることが可能です。
ピークカットの手順
問題の周波数を探す
まず、ボーカルトラックをソロにして問題のある周波数帯域を特定します。これには、EQプラグインのピークバンドを大きくブーストし、周波数をスイープ(動かす)する方法が有効です。
1. EQのQ幅を狭く設定(例:3〜5)。
2. ゲインを+10〜15dB程度に上げます。
3. 周波数帯域をスイープして、耳障りなピークを確認します(「キンキン」「ブーミー」などの不快な音がする箇所)。
ピークをカットする
問題の周波数を見つけたら、ゲインを下げてカットします。この時のポイントは、カットしすぎないことです。不自然にならない程度に調整しましょう。
• カット量の目安:-3〜-6dB程度
• Q幅:狭め(2〜5)
楽曲全体で確認する
ソロで調整した後、必ず楽曲全体の中で再生して確認します。全体で聴いた時に、他の楽器と調和が取れているかを判断してください。
ボーカルでよくある問題の周波数帯域
低域の不要成分(100Hz以下)
• 問題:ポップノイズや息遣いの「ボフッ」という音が目立つ。
• 解決策:ローカット(ハイパスフィルター)を使用して100Hz以下を削ります。
こもり感(200Hz〜400Hz)
• 問題:声がこもって聞こえる、モワッとした印象になる。
• 解決策:200Hz〜400Hzを軽くカット。
鼻声感(800Hz〜1kHz)
• 問題:鼻にかかったような音が目立つ。
• 解決策:800Hz〜1kHzを狭いQ幅で軽くカット。
耳に刺さる音(2kHz〜5kHz)
• 問題:「さしすせそ」や「しゅ」という歯擦音が強調される。
• 解決策:2kHz〜5kHzをターゲットにカット。ただし、明瞭さを失わないよう注意。
高域の不要成分(10kHz以上)
• 問題:ノイズや過剰な「シャリ感」が気になる。
• 解決策:必要に応じてハイカット(ローパスフィルター)を適用。
注意点
カットしすぎない
ピークカットは微調整が基本です。必要以上に削ると、ボーカルが不自然になったり、薄っぺらく聞こえることがあります。
楽曲全体で聴く
ソロでの調整だけに頼らず、必ずミックス全体の中で確認してください。バンドやインストとのバランスを意識しましょう。
リファレンストラックを活用
プロの楽曲を参考にして、ボーカルのサウンドとバランスを比較すると良い結果が得られます。
まとめ
ピークカットは、ボーカルMIXにおける必須のテクニックです。耳障りな帯域を抑えることで、ボーカルの明瞭さや聴きやすさが向上し、楽曲全体がより良い仕上がりになります。それ単体での効果は小さくても全体で聞けば大きな役割を果たしていることが分かるでしょう!
この記事で紹介した手順を参考に、ボーカルMIXのクオリティを一段と高めてください!