ボーカルMIXの中でも特に重要な作業が、インスト(伴奏)とボーカルの音量バランスを調整することです。この調整次第で楽曲の印象が大きく変わります。この記事では、ゲインステージングを前提とした音量調整方法を具体的に解説します。さらに、実際の作業で気を付けるべきポイントや、試してみたい具体的な設定例も紹介します。
インストとボーカルの音量調整の基本
まず初めに当たり前ではあると思いますが、大前提の音量バランスの目指すポイントと、ゲインステージングについて解説します。音量バランスはその楽曲や製作者の意図によっても変わるものです。例えば、弾き語りと、ロックやメタルでは目指す場所が違うので音量バランスは変わってきます。その大前提を頭で理解し、自分が目指す完成形をしっかり理解してから作業に移りましょう。
音量バランスの目指すポイント
• リスナーが聴きやすいバランスを作ることが大切です。
• ボーカルが主役の場合、歌詞が埋もれずに聴き取れることが最優先。
ボーカルはインストより1〜2dB前に出るのが一般的。
ゲインステージングの重要性
音量調整を正確に行うには、各トラックのゲインステージングが適切に行われていることが前提です。
• 各トラックの入力音量をVUメーターで-18dBFS付近に揃える。
• フェーダーでの操作が微調整で済むようにしておく。
クリッピング(音割れ)や音量ムラを防ぎ、MIXの精度を向上させることができます
ボーカルとインストの音量調整手順
ここでは簡単に作業の手順を解説します。この方法を基準に自分のやりやすい方法を探してみてください。
インストの基準音量を設定する
1. ピークを-6dB程度に設定
• インスト全体の音量を大きくしすぎないことで、ボーカルの調整に余裕が生まれます。
サビなどの音量の大きい箇所でバランスをとると、全体の調整がスムーズになります。
ボーカルの音量を調整する
1. フェーダーで微調整
• ボーカルのフェーダーを上げ下げしながら、インストに対して埋もれないポイントを探します。
2. A/B比較
• フェーダーを調整しながら、他のプロの楽曲と聴き比べを行いましょう。
リファレンスを活用する
• プロの楽曲を参考に
• 同じジャンルのリファレンストラックを使い、客観的に判断します。
ボーカルの音量を引き立てるテクニック
ここではさらにボーカルを引き立てるときに行うべき方法を紹介しています。この作業は必要だと思った時のみ行う形でいいと思います。曲に違和感が出ないように注意しつつ、作業を行なってください。
EQでスペースを作る
• インストにEQをかける
• ボーカルの帯域(2〜5kHz)を邪魔しないように軽くカット。
ボーカルを強調
• 2〜5kHzを+2〜3dBブーストすると、明瞭感がアップします。
コンプレッションで安定感を出す
• ボーカルの音量ムラを抑えるため、コンプレッサーを使用。
• アタック:1〜3ms
• リリース:20〜50ms
• レシオ:3:1〜5:1
サイドチェインを活用する
• サイドチェインコンプレッサー
• ボーカルが出る瞬間にインストの音量を少し下げる。
• 特にサビなどで有効です。
リバーブとディレイで空間を演出
• ボーカルが埋もれないよう、リバーブは控えめに設定。
• ディレイを適度に加えてインストと馴染ませます。
実際に試したい設定例
ポップスの場合
• インスト音量:-6dB
• ボーカル音量:-4dB(インストより2dB前)
EQ
• ボーカル:2kHz〜5kHzを+3dB
• インスト:同じ帯域を-2dB•
コンプレッサー
• アタック:2ms / レシオ:4:1
EDMの場合
• インスト音量:-4dB
• ボーカル音量:-5dB(ほぼ同等)
サイドチェイン設定
• 2kHz〜5kHzを-3dBに設定。
注意点とまとめ
音量調整時の注意点
• ゲインステージングが前提
トラックごとの音量が揃っていないと、フェーダー操作でバランスが取りにくくなります。
• 聴き比べを怠らない
プロの楽曲やリファレンストラックと比較し、客観的なバランスを確認。
最後に
インストとボーカルの音量調整は、ゲインステージングを適切に行った上で、具体的な設定を試しながら微調整することが大切です。リスナーにとって聴きやすいバランスを目指し、ジャンルや曲調に応じた工夫を重ねましょう。
これらのテクニックを参考に、次のMIXでぜひ試してみてください!