ボーカルMIXの中でも、耳に刺さる高音や「さしすせそ」の大きすぎる歯擦音(しさつおん)はリスナーに不快感を与えてしまいます。これをそのままにしてしまうと、楽曲全体のクオリティを下げてしまいます。そんな問題を解決してくれるのがディエッサー(DeEsser)です。
この記事では、ディエッサーの基本から具体的な設定方法、実際のMIXにおける使い方を解説します。ぜひ参考にして、ワンランク上のボーカルサウンドを目指しましょう!
ディエッサーとは?
ディエッサーは、特定の高音域を抑えるためのエフェクトです。様々なメーカーから販売されているプラグインがあります。ボーカルの中で特に耳障りに聞こえる歯擦音(「さしすせそ」や「しゅ」)をターゲットにし、その帯域だけを圧縮する役割を果たします。
通常のコンプレッサーとは異なり、特定の周波数帯域(4kHz〜8kHz)にのみ反応します。これにより、ボーカル全体の明瞭さを損なうことなく、歯擦音だけを適切に処理することが可能です。
ディエッサーが必要な理由
歯擦音が曲に与える影響
1. 耳障りな音を軽減
歯擦音は、特に高音域が強調された楽曲では刺さるように感じられ、リスナーに不快感を与えます。
2. 全体のバランスを損なう
歯擦音が強調されすぎると、他の楽器、特にシンバルやハイハットなどの高音域の楽器が埋もれてしまいます。
3. ミックスの質を下げる
歯擦音が目立つことで、楽曲全体が雑に聞こえ、プロフェッショナルな仕上がりから遠ざかります。
ディエッサーの基本的な使い方
問題の周波数帯域を特定
ボーカルトラックをソロで再生し、歯擦音が特に目立つ箇所を確認します。多くの場合、4kHz~8kHzの範囲が該当します。この帯域を処理することで、耳障りな高音を抑えることができます。
ディエッサーを挿入する
ボーカルトラックにディエッサーを挿入します。Wavesの「Renaissance DeEsser」や「Sibilance」などが人気のプラグインです。どちらも簡単な操作で適切な処理が行えます。
スレッショルドを調整
スレッショルドを下げて、歯擦音が圧縮されるポイントを設定します。スレッショルドを下げすぎると全体がこもった印象になるので、自然に聞こえる範囲で調整するのがコツです。
ターゲット周波数の設定
問題の周波数帯域(例:5kHz~7kHz)を特定し、その帯域だけを圧縮するように設定します。これにより、不要な部分だけを抑えつつ、ボーカルの明瞭感を保つことができます。
ボーカルMIXにおけるディエッサーの設定例
ポップスやバラードの場合
• ターゲット周波数:5kHz〜7kHz
• スレッショルド:-20dB〜-25dB
• アタック:速め(1ms〜3ms)
• リリース:中速(50ms〜100ms)
この設定は、柔らかく自然なボーカルを目指す場合に適しています。歯擦音を抑えつつ、声のニュアンスを残すことができます。
ロックやEDMの場合
• ターゲット周波数:6kHz〜8kHz
• スレッショルド:-15dB〜-20dB
• アタック:非常に速め(1ms〜2ms)
• リリース:速め(30ms〜50ms)
ロックやEDMでは、ボーカルが楽器に埋もれないよう歯擦音をしっかりと抑える必要があります。この設定では、歯擦音を目立たなくしつつ、エネルギッシュなボーカルを維持できます。
注意点
1. 処理しすぎに注意
ディエッサーをかけすぎると、ボーカル全体がこもったり、不自然に聞こえることがあります。少し歯擦音が残る程度に調整するのがベストです。
2. ミックス全体での確認を忘れない
ソロで調整した後、必ずミックス全体で聴き直しましょう。他の楽器と合わせた時にバランスが取れているかを確認します。
3. ダイナミックEQの併用を検討
ディエッサーでは足りない場合、ダイナミックEQを併用することで、より細かい調整が可能になります。
まとめ
ディエッサーは、ボーカルMIXで「刺さる高音」や「耳障りな歯擦音」を抑えるための必須ツールです。正しい設定を行うことで、ボーカルを自然で聴きやすく仕上げることができます。
この記事を参考に、ディエッサーを活用して楽曲のクオリティを一段と引き上げてみてください!